№383| ファッション業界は環境保全を流行にできるのか?

波及効果は高い、ファッションブランドのSDGsな取り組みに注目

Published on 2021.01.20

TEXT BY: yumiyoshisan /ONE-HALF


昨今のファッション業界では「Sustainable」や「SDGs(エスディージーズ)」といった、にわかに登場したワードが飛び交っている。地球温暖化、海水汚染など近年の環境問題の深刻化を受け、アパレル産業という、一見地球問題とはまったく無関係な産業が注目を浴びているためだ。

というのは、この産業が実用性以前に、多くは「おしゃれ」という自尊心を満足させるためだけに、存在しているといっているようなところがあるから。実は地球環境汚染への影響が大きい産業でもあるのだ。

廃棄物の量ももちろんだが、服を作る過程で大量の水を使用するためことで周囲の河川の水を汚染、その際に生じる温室効果ガス、さらには毛や皮を使うために動物を大量に殺さなくてはならないことも問題視されている。

反ファストファッション運動
出典:shaotft / Shutterstock.com

ご存知だろうか? WWF によると1枚のTシャツを作るのに必要な水は2700リットルとのこと。デニムの染色はプール1つ分、約1000リットルの水が必要というのもよく聞く話だ。だが、これも水の汚染だけに限った話。

つまり、これまで様々な素材をひとえに「デザイン」という観点だけで採用してきた結果、自然界にさまざまな問題を引き起こしてきたのがアパレル産業なのである。

世界のナショナルブランドの取り組みと
ファストファッション

だが、最近ではとくにナショナルブランドにおいて、環境保全に取り組みながらも新作をリリースしていくブランドが増えているように見受けられる。

そういった動きはハイブランドにおいて特に顕著だ。取り組みの先駆けとして有名なのがステラ・マッカートニー。2012年以来、自社のバッグのライニングには再生ポリエステルを使用していることを公言している。

また、目立つところでは、グッチは今年の夏、サステナブルなコレクションをオンラインで発表しているし、ノースフェイスは自社のダウンで河田フェザーが手がけるリサイクル羽毛を使用するものを発表した。もっと裾野を広げると、店舗に衣類のリサイクルボックスを置くブランドやショップも徐々に増えてきている。

ファストファッションと環境のSDGsのイラスト

一方、若者層に定着してしまったファストファッションは、この問題の根源としていきなり土俵に上げられることとなった。確かに、大量リリース、大量消費のこれらのブランドが環境に与える影響は計り知れない。流行を追求した多くの衣類は1シーズン限りで廃棄される。

本革の代わりに使われるのはプラスティックを使用した人工レザーだったり、毛糸の代わりに使われるのはポリエステル。ポリエステルは洗濯する際にマイクロプラスティックを排出することは意外と知られていない。巡り巡って我々の飲み水に混入する可能性や海洋生物へ被害を考えると、容易に手にとって欲しくないアイテムではある。

しかし、出口の見えないコロナ禍。ファストファッションブランドが人々の生活を助け、潤いを与える存在であることは否めない。それにファストファッションブランドもこのファッション界に沸き起こった流行と義務、つまり「サステナブルであること」に全く無関心でいるわけにもいかない。

ZARAの親会社であるインディデックスは昨年、2025年までに素材のすべてをサステナ素材にすることを名言しているし、H&Mは「Conscious」レーベルでは50%以上サステナ素材で作られた商品を展開している。

H&M Conscious Exclusive (コンシャス・エクスクルーシヴ)2020 AW コレクション
出典:PR TIMES

となると、さらなる一手として求められるのは、むしろ「カスタマー」側の意識だ。

不要なものは買わない。長く使えるものを新調に選ぶ目利き。あるいは率先してリサイクルにまわすこと。さらには、オーガニックコットンやローウォーターデニムなど環境に配慮した素材の選択など、買い手側の購入行動にも工夫が求められる時代。日常生活ではむやみやたらに洗濯をしない、といった工夫も有効だ。

(TEXT:yumiyoshisan /ONE-HALF)

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