№386| 年間800億本廃棄される「シャンプーボトル」を知らない問題

対策に向けて動きだす企業とブランド

Published on 2021.01.20

TEXT BY: Sachi Yamaguchi


プラスチック問題の一つである「シャンプーボトル 」

プラスチックゴミによって海洋汚染が起きているという問題は、今や私たちにも身近な話題となっている。昨今のレジ袋の有料化や紙ストローの導入などは、今も記憶に新しい。

特に、レジ袋の有料化に関しては未だ慣れない人もいるのではないだろうか。中には、マイバッグを持ってくるのを忘れた人が、レジ袋の料金を払いたくなくてそのまま野菜や牛乳などを手に持って帰宅する、という話もあるくらいだ。

そうして私たちの生活にも影響を与え始めたプラスチックに関する問題。この問題は、主に海洋に大きな被害を与えている。そのために様々な国や企業で対策が行われており、冒頭で紹介した対策などもその一つだ。しかし、当然のことだが、プラスチックはレジ袋やプラスチック製のストローだけではない。

今回紹介するのは、私たちが毎日使用する「コンディショナーボトル」「シャンプーボトル」についてである。

現在世の中にあるシャンプーボトルやコンディショナーボトルのほとんどはプラスチックでできている。そしてそれらのボトルは世界で毎年、800億本廃棄されており、そのうちリサイクルされている割合はわずか9%であるという。

今、世界の海に存在していると言われるプラスチックゴミは年間800万トンと言われている中で、シャンプーボトル やコンディショナーボトルも多く含まれていると考えられるだろう。

プラスチックの消費量を減らす「花王」の取り組み

そうした現状が深刻化し、人々のプラスチックへの意識も高まっている中で、こうしたシャンプーボトル やコンディショナーボトルから出るプラスチックを減らそうとする取り組みが様々なところで行われ始めている。

例えば、サステナビリティの観点で世界の企業を評価する「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World」に2連続で選定された花王の取り組みが挙げられる。

花王はシャンプーやコンディショナーの容器に使われるプラスチックを削減するため、内容物を濃縮し、容器をコンパクトにする提案や、詰め替えや付け替えの提案など、様々な取り組みを行ってきた。

出典:PR TIMES

さらに、今回は新たに薄いフィルムに空気を入れて浮き輪のように膨らませることで、ボトルのように使うことができるフィルム容器を開発した。

これは本体容器として使うことができ、従来のシャンプーボトル よりもプラスチックの使用量を減らすことができる。さらに、詰め替える手間も省けるため、より使いやすくなるというメリットが生まれた。

バイオマスプラスチックを使用する「BOTANIST」の取り組み

出典:PR TIMES

シャンプーボトルに関する取り組みを行っているのは花王だけではない。とあるヘアケアブランドであるBOTANISTでは、セット箱でペットボトルをリサイクルした素材を使用したり、環境に配慮したシールの紙素材を使用したりと、様々な取り組みを行ってきた。

さらに、BOTANISTでは新たな取り組みとして、同じプラスチックでも「バイオマスプラスチック」と呼ばれる、植物などの再生可能な有機資源由来のプラスチックを使用したバイオマス容器の使用を始めた。これはCO2の削減が期待でき、さらに森林を破壊することなく、使用可能な土地や畑のサステナビリティの育成が可能となる。

これから2030年に向けて、容器だけでなくセット箱や販促物、梱包材など、全ての素材に環境に配慮したプラスチック素材を使用し、可能な範囲で紙素材への置き換えを推進するとしている。

プラスチックを一切使わない「ethique(エティーク)」の取り組み

出典:PR TIMES

さらに、現在ではプラスチックを一切使わないシャンプーを開発する企業も登場している。それはethique(エティーク)というニュージーランドで誕生した、「プラスチック撤廃」をテーマとしたブランドである。

このブランドでは、シャンプーやコンディショナーの成分がほとんど水であることに注目し、水を取り除いて必要な成分だけを濃縮した「シャンプーバー」を開発した。固形バーであるため、プラスチック容器を使わずに済むということだ。この取り組みにより、

これまでに600万本ものプラスチック製造、廃棄を防止しているという。さらに、商品に使われている成分にもこだわっており、全てに置いて環境、動物、人体に影響を及ぼすことがない成分を選んでいる。

身近なところでプラスチック問題への取り組みは進んでいる

前述したように、今や私たちも知っているような企業やブランドがそれぞれ違う方法でプラスチック問題に取り組んでいる。中には、知らず知らずのうちにそのブランドの商品を使っている人もいるかもしれない。

それほど、世の中は「プラスチック問題」を始めとした様々な問題に対して主体的に動こうとしている。

その動きは企業や国だけではない。結局のところ、ブランドがどれほど環境に良いといった商品を開発し、大々的に売り出しても私たち消費者が購入し、その商品を使い続けなければ意味がない。企業が動き続けるのに合わせて、私たちも購入する際の基準を変えなければならない時が来ているのではないだろうか。

例えば、自分の理想の髪の仕上がりになるか、使い心地はどうか、と同じように、「その商品が配慮されたものであるかどうか」といった点を意識する必要がある。

これを機に、そういった価値観を軸に、何を買うか選んでみては?

 (TEXT:Sachi Yamaguchi)

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